11月2日2005/11/03 01:43

 行動心理学って学問がある。平たく言えば「人間や動物はどんな行動を取りたがるか」を研究するものである。代表的な研究結果が「パブロフの犬」で有名な、条件反射の発見だね。
 
 ただこの研究、かなーり後味悪い研究成果も山ほど出している。いや人間の心なんて複雑怪奇であり、ある実験結果を他の物事にそのまま当てはめるのは間違う可能性があるんだけど、それを承知してすらイヤ~な感じの結論が出てる研究も多いんだよね。
 
 そんなものの代表としては、「精神科医は、患者の状態より自分のおかれた状況で診断を下す」とか、「ちょっとした権威を振りかざされただけで、相当残酷なことを実行しちゃう」とか、「他人が何とかしてくれそうだと思うと、いくらでも無責任になる」なんてのがある。本当は単純にこう断言するのは危険なんだけど、そう解釈したくなる実験結果があるのよ。
 
 そんな実験の1つに、「報酬を小出しにされると、人は自ら進んで洗脳される」ってのがある。実験内容は単純。報酬20$で「嘘をつけ」と命令したときと、報酬1$で命令したときでは、報酬安い方がその嘘を本気で信じる傾向が強かったってものだ。
 
 この実験、元々はある観察結果を基にして行われたモノだ。いわゆるカルト集団が、「絶対当たるワケない予言」を出した。それを信じて行動を起こした連中を観察したところ、明らかに予言が外れた後の方が熱狂的に教祖を支持したんだそうな。うーむ。
 
 何故そんなことが起きるのか?説明はこうだ。人間誰だって「自分は間違っていた」と思い知らされるのはイヤだ。得られるものが多ければ「お金に目がくらんだんだから、仕方ない」と割り切れるけど、得られるモノが少ないとタダのバカだ。それを認めたくないから、「自分は信念からこうしたんだ!」ってな心理状態になり、結果として自分から勝手に洗脳されちゃう。恐ろしいですねえ。
 
 ちなみにこの研究結果、応用されてる例が発見されてるらしい。いわゆる冷戦時代に捕虜となって「洗脳された」米兵について研究したところ、反米的な作文書かせた後に、つまらない報酬(飴玉など)を与えられただけ…って例がいっぱい見つかったんだとか。「つまらん報酬でトンデモないことやっちゃった」ってのを認めたくない気持ちを利用されたワケだ。
 
 これを紹介するだけなら、「怖いですね~、イヤですね~」で終わり。しかし、私はここでふと考えた。ということはだ。「応援する対象が弱い方が、実は熱狂的ファンを生み出しやすい」ってことにならないか?
 
 私が応援し始めたとき、スワローズはBクラスが指定席だった。Jリーグ開設当初の浦和レッズの弱さは有名だ。最初に追いかけた馬シャコーグレイドは心底弱かった。その他諸々、最初に「痛い目」に遭わされた結果、私が今も深くふかぁ~くハマっているモノは多い。うを、なんかシャレになってねえ…
 
 まあ、こーゆーものは「好きになるきっかけ」にも乏しいのが普通なので、普通の人なら「そもそもハマりゃしねえ」のかもしれない。しかし…それで片付けていいのかなあ。色々とクソ下らない理由で期待しちゃうことはあるよねえ。その結果ズルズルと…ってのはかなり多いんじゃないかと。皆さんも心当たりありません?
 
 問題はもう1つ。逆ってのは必ずしも真とは限らないけど、成立するかどうか考えてみる価値はあるだろう。すなわち、「応援する対象が強いと、実は熱狂的ファンになりにくい」ってこと。これは…どーなんだろ。とても気になる。
 
 世の大半のプロスポーツは、「強ければそれでいい」ってな考え方をしがちである。それが悪いとは思わないけど、行動心理学は「それは間違いかも」という冷酷な問いかけを発しているような気がする。怪しげな「優勝した時の経済効果」なんてものを計算してるヒマがあるんなら、もっと真剣に「チームの強さと支持率の関係」を調べて欲しい。いやマジに。私だってこの結論認めたくないんだから。