9月23日2005/09/24 02:15

 うーん、何だかなあ。色々と忙しい。自分でも自分の予定って奴がよくわからん。困ったモノだ。
 
 本日のお題は、「星の王子さま」翻訳について。ざっとだけど比較してみたので、簡単な研究発表をしておこうかと。なお、さすがに原文及び英訳(出版はこちらが先)には当たってないので、ちゃんとした研究とは言えません。悪しからず。
 
 今年で独占翻訳権が消滅したってんで、なんか山のように翻訳された「星の王子さま」。いい作品だとは思うけど、こんなにたくさん翻訳が出るってのはどーゆーこと?まあ何かしら「大人の事情」があるんでしょ。それを探るのも興味深いんだけど、ココではパス。
 
 この本、ちょっと前までは岩波少年文庫版のみが存在していた。岩波少年文庫ってのは「ホビットの冒険」「はてしない物語」「ドリトル先生もの」など、大人が読んでも楽しめる作品が多い。ただ、この世には「子供向け」ってだけでバカにして読まない奴が多いため、あえて大人向けとして出版すればウケるかも…と考えて翻訳が相次いだのでは。
 
 私が初めて「星の王子さま」を読んだのは、高校時代かなあ。「ホビットの冒険」を読んだついでに手を出したと記憶してる。この本、強いて言うなら中高生が一番「面白さがわかりにくい」年代のような気がするけど、読んじゃったんだから仕方ない。でも面白かったし、その後も何度か読み返した。読んだことないのはもったいないので、何でもイイから読むべし。
 
 最近出た新訳だけど、目を通したのは集英社・宝島社・中央公論社の3つ。他にもあるらしいんだけどね。私が大宮の街で探して引っかからなかったことを考えると、ちょっと入手しにくいのかも知れない。集英社は文庫版もあり、入手しやすさでは一番か。
 
 まずは題名。ほとんどが「星の王子さま」という従来の題名を踏襲している中、今回読めなかったみすず書房版が「小さな王子さま」としている。これについては、あえて「星の王子さま」に軍配をあげたい。日本人がイメージする「王子」ってのは、自動的に滅茶苦茶若いので、いちいち「小さな」を付ける意味が薄いと思うので。
 
 王子さまって言われてどんな人をイメージするか?平均的日本人なら、とにかく若い人をイメージする。独身なのはほぼ間違いないし、20代以上をイメージすることは希じゃないかと。しかし、現実の「プリンス」ってのはもっと年上でもおかしくない。英国の王子はいい年のオッサンだし、日本の皇太子殿下も既婚・子持ちである。日本には王様がいない(天皇家はあくまで天皇)ので、王子さま=童話などに出てくる存在、だからね。
 
 内容にいこう。集英社版はかなり歯切れが良く、元気がいい印象を受ける。正直言って違和感を覚えるほど。これはこれで悪くないのかも知れないけど、なんか大事なことが落ちてしまっている気が…宝島社版は少し表現が固め。あえて難しい言葉をためらわずに使用している気がする。大人向けなんだからこれでいいのかもしれない。中央公論社版も似たような傾向がある。まあ単純に「好みの差」だとは思うけど。
 
 私の意見を言わせてもらうと、オススメできないのは宝島社版。宝島社版だけ女性の訳なんだけど、これが思いっきり裏目に出てる気がする。「星の王子さま」って作品は、正直言って女性には理解しにくい部分があると思う。「男の子」って生き物だった時期が存在しないからね。そこをきちんとふまえて翻訳すればいいんだろうけど、正直その自覚が足らないような。この作品で、男の子の「女の子ってのはわからん」ってボヤキがきちんと描けてない(ニュアンスがヘン)ってのは致命的でしょ。
 
 というわけで、私のオススメはやはり岩波少年文庫版。コレじゃ駄目って理由が何1つ見いだせない。子供向けだから難しい言葉が使えないってハンデがあるのは確かだけど、そもそもそういう表現は可能な限り排除するべき作品でしょ。各社版とも「上回ってる」場所があるのは事実だけど、総合的に見るとはっきり負けてるかな。正直言って、思った以上に差があった。
 
 私に言わせると、そもそも企画段階からして「敗北」が決定づけられているような気がする。岩波少年文庫版を「子供向けだから」って理由だけで手に取らないような奴は、「星の王子さま」を読んでもちゃんと理解できない。それはつまり、ゾウを飲み込んだウワバミの絵を見て、「これは帽子だ」とヌカすような輩ってことだから。そんな連中に向けて翻訳しようって魂胆がある以上、どこか「大事なところが落ちた」ものになっちゃうのは当然のことじゃないかな。
 
 まあこれはあくまで私の感想であり、あくまで当てはまるのは私に対してだけじゃないかと思われる。じゃあココを読んでいる皆様にとってどうなのかは、自ら読んで判断してもらいたい。結局の所それ以外に判断材料があるとは思えないので。

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